02 暗い夜の森

癌でも穏やかな最期を

今は、4人に1人が癌で亡くなる時代です。

癌で最後を迎える場合には、メリットとデメリットがあります。

癌で人生の最後を迎えるメリット

1 残された時間がわかる
余命を知ることで残りの時間がわかります。有限である時間を大切にでき、人生と向き合うことができます。
2 後悔のない人生を送れる
体を動かせる期間があるので、やっておきたいことができる時間があります。病状が進んだ時の事前の準備もできます。
3 「思いやり」と「つながり」を感じられる
誰かの手を借りる、介護や看護を受ける期間があります。その時に「思いやり」と「つながり」にふれられます。

○癌で人生の最後を迎えるデメリット

1 体の苦痛
病状の進行とともに、様々な苦痛が出ます。治療による副作用による苦痛が出る方もいます。
ペインコントロールで対応できることもありますが、難しい場合もあります。
2 気持ちの不安
様々な不安を抱きます。
人によっては、不安が強くなりすぎて、恐怖となってしまうこともあります。

○デメリットを減らし、メリットを活かす

誰もが最後まで穏やかにに過ごしたいと願うものです。

しかし、癌の場合だと「体の苦痛」や「気持ちの不安」で苦しんでしまう場合があります。
それはまるで、暗くなっていく夜の森に迷い込むようなものです。

暗い夜の森でも、ランプを灯せば癒しの森になるように、
「体の苦痛」や「気持ちの不安」も癒していくことができます。

そうしたランプを用意するために、「体の苦痛」や「気持ちの不安」について、
事前に知っておくことが大切です。

イラスト:ランプのバナー

癌の治療が難しくなった後の体と気持ち

癌の治療が難しくなった後の体と気持ちについて段階別に説明していきます。

(1) 治療が難しいと知ったとき
(2) 病状が進行する頃
(3) 体が動かなくなる頃
(4) 寝たきりとなる頃
(5) 最後の1ページを閉じる頃 

(1)治療が難しいと知ったとき

①体について

体は元気なことが多いです。特に症状がなく別の検査の時に見つかる場合もあります。

イラスト:診察室

②気持ちについて

癌の治療が難しいと知ったとき、大抵の方は、ショックを受けます。

 

余命が何年と言われるもあれば、数ヶ月と告げられることもあります。

余命が短いほど、そのショックは大きい傾向があります。

イラスト:青空

(2)病状が進行する頃

①体について

体の苦痛は、癌が出来た部位によります。痛みが出にくい部位もあれば、痛みが出やすい部位もあります。

また、癌の影響で手術を行った場合やストーマや腎瘻などをつけた場合には、そのケアが必要になります。酸素や点滴など医療器具を使う場合には、その管理が必要になります。

 

②気持ちについて

腫瘍が大きくなっているなど、癌が進行していることを実感すると、痛みが増すことへの不安や、命がそろそろかなと現実味が増します。

このときも、ショックを受けやすいです。

 

(3)体が動かなくなる頃(3ヶ月から1カ月前)

①体について

癌の広がり方によって、体の苦痛が強くなる場合があります。

痛みが強い場合は、ペインコントロールが必要になります。

ただ、副作用により、ふらつきなどが出る場合もあります。

 

また、体力の低下により、歩くことが難しくなります。

そうなると、トイレやお風呂に行くにも介護が必要になってきます。

オムツを着用する頃です。

 

②気持ちについて

体力の衰えや、トイレで失敗することで、自尊心が傷つきます。

 

一人で過ごしていると、病気や死ぬことばかりを考えてしまい、気持ちが暗くなりがちです。

このまま寝たら、もう目覚めず死んでしまうのではないかと不安になる方もいます。

 

(4)寝たきりとなる頃(1カ月前くらい)

①体について

さらに体の痛みや苦しみが強くなる場合があります。
中には、体の置き場がないくらいに痛みが強い方もいます。

 

体力がなくなり、起き上がったり椅子に座ったりすることがつらくなります。

そのため、食事やトイレもベッド上で済ますことが増えます。

自宅のお風呂に入るのは難しくなります。

 

そして、同じ姿勢で寝ていることで体中の痛みが出る場合もあります。

また、食事が少しずつ食べられなくなってきます。

 

②気持ちについて

ベッド上で過ごし続けることで時間を持て余してしまいます。

一人でいる寂しさや一人で死んでしまうことへの不安を抱く方もいます。

 

明るい昼間にウトウト寝てしまい、夜になると眠れないことがあります。

夜は不安や寂しさが強くなる方ので、夜になるのを恐れる方もいます。

 

(5)最後の1ページを閉じる頃(1週間前くらい)

①体について

痛みが強い場合はペインコントロールの影響で、起きている時間が少なくなります。

痛みが少ない場合でも、眠っている時間が増えていきます。

食事はほとんど口にしないことが多いです。

 

②気持ちについて

起きているときは、ぼんやりしていることが多いです。一時的に元気になる場合もあります。

この時期には、思い出話をする人や、亡くなった人に会ったと言う人、何となく別れの言葉を口にする人もいます。

 

そして、最後は眠るように静かに最後のページを閉じる方もいます。
ただ、残念ながら苦痛が強い状態で最後を迎える方もいます。

 

癒しのランプを用意する

以上です。何もしないでいると、「体の苦痛」や「気持ちの不安」が強くなってしまうこともあります。

最後まで穏やかに過ごせるようするために「体の苦痛」や「気持ちの不安」は癒していくランプを用意していきましょう。